独自の美しさを提案する植物屋が書いた本

素敵な本を紹介します。

サボテン・多肉植物を専門に取り扱っている植物屋「叢(くさむら)」の店主の方が書いた、

見たことない サボテン・多肉植物」です。

広島市内にある植物屋「叢」

ブルー●スとか、ELL●とか、オシャレな雑誌やオシャレな雑貨屋にサボテンがあって、提供元を確認したらほぼほぼ「叢」です。
各所で展覧会も開いています。

広島市内に実店舗があります→HPはこちら

店主の小田康平さん自ら全国の農家を飛び回ってサボテンを収集され、販売をしてます。

そこに並ぶのは店主のおメガネに適った「いい顔をしたサボテン」たち。

この本に出会ったのは、数年前に実際に店舗に行ったときのこと。
サボテンに手が届かなくて(割といい値段がする)、本だけ買って帰りました笑

この本のどこがいいのかというと、店主の方が前書きでも書いているのですが「個体のストーリーを大事にする」というところです。

最初はいいと言ってくれる人は一人しかいなかった

店主は10年間、実家の花屋さんを手伝っていたそうです。店頭にいいなと思ったサボテンを並べていたら、「いいね」と言ってくれる人が現れたそうです。

「いいね」と言ってくれた人が別の人を連れてきてくれた。

この繋がりがじわりじわりと広がり、東京で展覧会を開いた時に「叢」の存在が一気に広がっていったそうです。

地名度は広島より、都市部の方が多いかもしれないですね。

私がお店を訪れた時も「県外からのお客様がたくさんいらして」と店員の方が言ってました。

「価値が無いとされてきたものに、価値を与えるという行為」

叢のサボテンのどこがいいのか、パッと見てわかる人もいれば、わからない人もいると思います。

私は後者の部類の人間です。

説明されて、ようやく「ああ、いいね」とわかる。

この本では、店主の方が何万と拾い上げてきたサボテンの中から選び抜いたサボテンの個性を一つ一つ解説しています。

その美しさの基準が、叢の新しい価値観の提供なのです。

「厚みがある植物」たち

叢の植物が、表面的ではなく何かを考えさせられるような厚みのある植物であるように、いつも選んでいるつもりです。

美しさの基準て、人それぞれだと思うんですが、「こういうのが美しい」という価値観を押し付けられてる部分が割とあると思うんですよね。

きちんと手入れがされた見た目の美しいものは、それはそれで心惹かれるんですが。

時間が加わり、古木のようになったサボテンは、サボテン界ではタブーらしいのですが、叢では「時間」という個体が生きてきた過程を大事にしています。 そこにストーリーがあるから。

「何かしらある程度のストレスがかかった方が肌にいい味が出ることが多い。」らしいです。

この本からは、表面的ではない、その人にしかわからない美しさを見つけたときのときめき、喜び、そういうのが伝わってきます。

サボテンの名前

サボテンの品種名が時代の先を行っているのが気になったので、一部を紹介させてください。

  • 月世界(げっせかい)
  • 白条般若モンストローサ(はくじょうはんにゃもんすとろーさ)
  • 金鯱の現地球(きんしゃちのげんちきゅう)
  • なるほど柱(なるほどばしら)
  • 金刺斗鷲玉一文字綴化(きとげとしゅうぎょくいちもんじてっか)

現地球」って・・・このスケールの大きさ。一方で「稚児姿(ちごすがた)」という可愛らしい品種名もあるのです。
長い名前は接ぎなどで名前が合体していてたりするのだと思われます。
なかには「ゴジラ」とか、聞いたことある名前もちらほらあって、振れ幅が面白いです。

店主が選んだナンバーワン

この本で紹介されている78の個体の中で、店主がナンバーワンにあげているサボテンがあるのですが、小汚いヨークシャテリアみたいなんですね。

最後にその植物の解説を、少し長いですが紹介させていただいて、締めくくりたいと思います。

アガペ不明種綴化(あがぺふめいしゅてっか)

何がいいかというと、この意味不明なだらしない野菜のような感じ。

もちろん突然変異を起こしているので普通のアガペとは全然違う風貌をしています。

初めて見つけた時はそこの農家さんからも見放されたかわいそうな扱いで、端っこに追いやられていました。

葉先は枯れて、元気なんだが元気が無いんだかわからない。多くの人はうちのハウスに来て「どれが一番好きですか?」と僕に聞く。

これを指差すと「えーっとどれですか?」と聞き直す。こんな場面が叢で何度おこなわれただろうか。

植物を見すぎて、この人は壊れてしまったんだろう・・・的な目で見られることもしばしば(笑)

こいつの良さがみんなにすぐばれてしまうようではこの先植物の新しい提案なんて長いことは出来ないはず。ゴッホだってエジソンだって最初は誰にも相手にされなかったんだから。

店主が自身を投影しているようにも思えます。

私はこの本で、新しい価値観に触れることができました。

植物が好きな人、写真が好きな人にもおすすめの一冊です!!

この本からは以上です。

店舗情報

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